自転車のホイールバランスを調整する方法


【自転車ホイールのバランス?】
自転車のホイールは1枚のアルミの板を曲げて作る。円形にしないといけないから製造工程上端と端を繋げなければならないが、その繋げ方にはPinned(ピン接合)とWelded(溶接)の2通りがある。

どちらにせよ、接合部はそのほかの部分よりも重量が偏ることになる。回転体の円周上に重りをのせて回してみると分かるが、回転速度が同じなら質量のある部分ほど遠心力がかかるから、回転がスムースじゃなくて、回転軸が引っ張られて振動が起こりグワングワンする。(この表現で分かるかな…)

つまりとにかく回転がスムースじゃなくなる。自転車のホイールというのはメーカー側でこの質量バランスを取ってくれないので、普通に売られているホイールは回転がスムースじゃない。円周上で均等に遠心力が起こっていれば、回転軸が引っ張られることがない。

グワングワンの分かりやすい例としては、自転車を逆さまにして、思い切りクランクを回してホイールを回転、放置してみると良い。自転車全体が振動するだろう。この振動があると、主に下り坂の高速域で車体の安定性が無くなるのと、平地では加速性が悪くなるなどの問題がある。


【ホイールバランスを取る】
この振動を止めてスムースにホイールが回るようにバランスを取ってやる必要があるが、それにはこれを使う。


ゴルフクラブ用のウェイトを使う。ゴルフ用品店で安く手に入る。素材は鉛で、裏面に両面テープが張ってある。これを重さの偏りのある部分の反対側に張ってやることで、偏った遠心力を相殺してやろうというのだ。鉛製なので、ハサミで小さく切ってやることもできる。




【重さに偏りがあるのはホイールだけじゃない】
実はタイヤとチューブもバランスが均一ではない。タイヤはコンパウンドが全体で均一ではなく、チューブはバルブがある。

だからバランスの取れたホイールにタイヤとチューブをはめれば、バランスは乱れる。「ホイールバランスを取る」とは、タイヤとチューブも含めてバランスを取らなければならない。

これ結構盲点で、ホイールバランスの取り方を紹介しているその他のブログや動画ではホイールだけのバランスを取っていたり、タイヤとチューブをはめた状態でバランスを取っていたりするが、あれはよくない。

ホイールだけの場合は前述の通りタイヤとチューブをはめればバランスが乱れるのだが、タイヤとチューブをはめた状態で行えば、そのときはバランスが取れていても、パンク修理などでタイヤを外して元に戻したときにバランスが乱れる。

質量の偏りは常に同じところに配置しなきゃならない。でないと重りを設置してバランスを取った意味がない。タイヤをホイールのどの部分に設置するのか、その位置までをも決めてしまわないと、結局意味がなくなる。


【ホイールバランスの取り方】
大まかな順序としては、


  • タイヤのバランスの偏りを求める
  • タイヤとチューブをはめて、ホイールとタイヤとチューブ一体のバランスを取る


という2段階になる。とりあえずフロントホイールから始める。


まず自転車をひっくる返してホイールを外し、タイヤとチューブを外してホイールだけの状態にし、それをフロントフォークに戻す。

すると重量が偏っているので自然と回転して振り子のようになって止まるが、一番下が重く、上が軽いということになる。つまり下の対角の上の部分に重りを張り付けてやればバランスが取れるわけだ。


切れ目が見えると思う。これがリム接続部

大抵はリムの接合部が下になって、バルブ穴が上になる。だからバルブ穴周辺に重りを追加して、その都度ほんの少しホイールを回して揺らしてやってみる。バランスが取れたときには振り子のような回転が無くなるはずだ。


ここでの重りは前述のゴルフクラブウェイトでもいいし、硬貨でもいい。今回は1円硬貨で行っている。

ここまでの作業はホイールバランスを取る最終的なものではない。これはタイヤの重量バランスの偏りを知るための準備作業。バランスの取れたホイールにタイヤをのせることで、タイヤだけの重量バランスを測ることができるというわけ。

このバランスの取れたホイールにタイヤだけをはめ込む。これをフォークに戻してやれば振り子のように回転するだろう。先ほどと同じく下にきた部分が一番重いわけだ。そこで、この一番下に来た部分にペンで印をつけておく。


タイヤ側面に赤ペンで薄く印を付けた。

この印をつけた部分をホイールの重りを付けたバルブ穴までもってくる。そしてチューブをはめ込んで膨らまして普通にホイールを作る。硬貨の重りはもう不要だから外しておく。


ゴルフウェイトの重りをつけて調整していく。


調整後、しっかりくっつけるためにプラハンなどで軽く叩いて密着させる

これをフォークにはめるとまた振り子のように回転する。一番下に来た部分の対角に重りをのせつつ、回転させて、振り子のような回転が起こらなくなれば完成。これでホイールバランスが取れた。同じことをリアホイールについても行う。

終了後、もう一度クランクを思い切り回してみるといい。グワングワンと振動が起こらなくなったはずだ。


【回転体の外側への重量物追加はデメリットではないか?】
回転体は中心の回転軸から外側へ行けば行くほど、その重量の影響を強く受ける。

このホイールバランスの取り方は、ホイールという回転体の外側、リムに重量物を追加しているわけで、こういうことをすると加速性が無くなるとかあまりいいことはない。

しかし、今回紹介した方法はタイヤの重量バランスまでも考慮している方法。ホイール単体では一番重い部分はリム接合部だったわけだが、その重さの影響を相殺するように、タイヤの一番重い部分を対角に持ってきている。これによって、ゴルフウェイトの追加量を最小限にしている。

なによりもホイールバランスが取れれば、重量物の追加による悪影響など無いも同然。得られるメリットの方が大きい。


【タイヤをはめる位置が決まる】
タイヤに印をつけたが、これからはパンク修理などでタイヤを外すたびにあの印がバルブ穴のあたりに来るように設置すること。ホイールのどのあたりにでもはめればいいというものではなくなる。

もし、タイヤに印をつけたときに、重りの位置がバルブ穴付近でなかったら、ホイール側にも重りを付けた位置に印をつけておくこと。タイヤの印とホイールの印とを合わせてタイヤをはめたらいい。

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