399~406日目【ペルー】Lima (リマ)への8日間 トルヒーヨ~リマ間、沿岸部砂漠帯の走行

2015年7月13日~20日
温泉を優先したスケジュール。ワラスへは行かない。Hospedajeの罠。国によって異なるホテルの概念。

Casa de Ciclistasのオーナー、Luchoさんと

【スケジュール変更: ワラス行きを辞め、温泉郷チュリンを選択】
 ワラスを勧めない人はいません。それだけ素晴らしい所なのでしょう。ただ大抵の旅人が行くということで、同じものを見に行っても仕方がないという思いがあります。皆が行く所は心に響かないというケースがこれまでの旅でよくありました。私にとってワラスはどうもそういう雰囲気があるように感じます。ペルー人にワラスのことを聞いても Muy lindo. (すごく綺麗)と言うばかり。他に形容する、私を惹きつける言葉は無いのでしょうか?

 カナダのバンフ、エクアドルのクエンカなど綺麗な街・自然のある観光地を「良い」と感じたのは初めの2日間だけでした。綺麗は綺麗なのですが、ただそれだけです。長期滞在してもガイドマップの見物をあちこち巡ると疲れますし、ただ街を散策するにしても「何もしていない」事実がそこに滞在している理由を消し去るため虚無です。このように良い物を見た感動は疲労と虚無とですっかりキャンセルされて、出発する時には結局自分に何が残ったのか疑問です。

 カハマルカで温泉に浸かった時こう思いました。こじんまりした秘境温泉街で湯に浸かったあと、美味しいものを食べてのんびり散策する方がよっぽど良いと。Baños del Incaの人と街のほのぼのしたあの温泉町ならではの雰囲気が忘れられなくて、草津温泉のリラックス感を想起したものです。湯に浸かるというアクション、湯治という滞在に理由をもたらす行動が、長期滞在特有の「やり尽くしてしまってやることの無い」虚無感を排除するのだと思います。

 それに何か違うものが欲しいのです。山や湖や滝や青空より、美味しいものや会話や実際に肌で感じるリラックス感が欲しいのです。アクティビティですね。ただ見るだけでなくて、体感するということです。

 一番は記憶の可能性を引き出してやることです。複数のアクションを組み合わせてやると記憶は確かなものになるといいます。見るだけでなくて、同時に触れて、味わって、肌で感じてやるのです。自転車旅行はこの点で優れていると思います。これまで走ってきた道は不思議と記憶しているものです。曖昧な雰囲気を思い出すのではなく、想像力に依った人工の雰囲気を感じるのでもなく、写真を見たり情景を想起した時に確かな記憶による本物の雰囲気を思い出して感じるのです。


【リマまでの8日間】
ホテルの屋上でテント泊。お祭りで町中のホテルに部屋が無かったため

 トルヒーヨからリマまでを無理なく走り切るには、適度に街を経由できる8日間がベストと判断しました。距離は600kmくらいですが、このコースを少ない日数で走り切るように頑張ることは避けたほうが良いでしょう。急いで頑張っても、着いた目標地で長く沈没してしまうようでは意味がありませんからね。自転車旅行では燃え尽き症候群が怖いのです。


 この8日間は砂漠のアップダウンを繰り返して進むばかりでした。景色も単調でつまらないものです。山ばかり見てきた自分にはちょうどよいとは思いますがね。


 チンボテの周辺は危険スポットです。自走にこだわらなければ、沿岸部はエクアドル国境からリマまでの区間をバスで飛ばしたほうが良いかもしれません。私はチンボテの危険を知らずに通過して、街を出るときに住人の方に教えてもらいました。冷や汗ものです…

 走行スケジュールは以下の通りでした。


1日目: トルヒーヨ → チャオ 74km
2日目: チャオ → ヌエボチンボテ 76km
3日目: ヌエボチンボテ → カスマ 54km
4日目: カスマ → ワルメイ 85km
5日目: ワルメイ → パラモンガ 90km
6日目: パラモンガ → ワチョ 63km
7日目: ワチョ → チャンカイ 72km
8日目: チャンカイ → リマ 70km

走行距離: 584km
積算走行距離: 15123km

ミスプリントの標識

多いよ!

断崖絶壁の道。実は自転車通行禁止だった

 向かい風の強いコースなので町を経由するようにスケジュールすると無理なく走れます。4, 5日目は走り過ぎですが、スケジュール上仕方ありませんね。野宿は可能ですが、町を経由できるならオススメしません。町の消防署でテント泊をお願いしたほうが安全でしょう。私の場合、初日はテント泊で他はホテルに泊まりました。家族からホテルに泊まるよう言われております。ナスカ以降の山岳部に入ったら、ウユニ塩湖以降の走行に備えて野宿・テント泊を増やして感覚を慣らしていきます。

サウナ屋の中にお宿桜子がある


 トルヒーヨから8日間でリマのお宿桜子に到着。1日フリーでゆっくりした後、温泉郷チュリンへバス移動。温泉三昧後にお宿桜子に戻り、リマ観光をして、クスコを目指します。


【ペルー沿岸部の走行】
 砂漠が広がっています。標高を0m~300m上げ下げするアップダウンが続きます。南風がいつも吹いていて、南下するには常に向かい風となります。朝と夜は肌寒く、昼間でも陽射しがない限り寒いです。「暑いけれど平地のペダリングアウター天国で距離を稼げる道」というイメージがありますが、そんなうまい話はありません。


【料金所】
 Auto Pista (高速道路)区間があり料金所が設置されていますが、素通りで問題ありませんでした。


【写真撮影禁止区域】
 リマ近郊のAncon (アンコン)とSanta Rosa (サンタロサ)は軍事的要所なのか分かりませんが、写真撮影禁止です。道の写真を撮った後、警察官に止められてパスポートと写真をチェック。撮った写真は消去されました。首都リマ防衛の要なのかも知れません。


【低地のDucha Caliente (ホットシャワー)】
 中南米の人々の認識は日本人には理解し難いことが多いのですが、そのひとつがシャワー。低地のホテルサービスには確かにホットシャワーがあると書かれていますが、実際はそんなものありません。日本人には明らかに冷水シャワーで、水を出して何分待っても冷たいままです。でも中南米の人々はこれを普通に浴びるのです。砂漠の肌寒い朝でも浴びまくってます。全く信じられない。


【ペルーにおけるHospedajeという宿泊施設の概念】
 チャンカイの街で泊まったHospedaje。部屋でのんびりくつろいでいたら扉をノックされ「3時間経ちましたので立ち退きをお願いします」と。

 え、一晩じゃないの?3時間の滞在で20ソルも吹っ飛びました。日本円換算で800円でも、ペルーで20ソルあったらかなりいいもの食べられます。これは痛い出費です。

 「Cuanto cuesta una noche? (一晩幾らですか?)」と聞いたのですがね。面倒なので食い付かずに出ましたが、もう18時半で外は暗い。新しく宿泊施設を探して終了。一晩30ソルのHostalです。

 これは初めての経験ですね。今までコロンビア・エクアドルとHospedajeに泊まってきてこんなことは一度もありませんでした。思い返せば兆しは無かったわけではなくて、ペルーに入ってから「Cuanto tiempo? (どのくらい滞在しますか?)」と聞かれることが何回かありました。その時は「何でそんなこと聞くんだろう、宿泊なんだから一晩に決まっているだろうに」と疑問に思いつつもあまり気にしませんでした。

 国境をまたぐとホテルのシステムが若干変わることは分かっていました。しかしコロンビア・エクアドルのHospedajeの概念と、ペルーのそれとは違うことを今回初めて知りました。どうやらペルーのHospedajeには「時間泊」の概念があるようです。つまりラブホ要素があるのです。したがって、ペルーではHospedajeへの宿泊は避けたほうが良いでしょう。Hotel, Hostalが通常の宿泊となります。看板に意味不明の数字が3つ書いてある宿泊施設はラブホ要素ありのようですので注意。

 思い返せば、アメリカのMotelとメキシコのMotelも違うのですよ。アメリカのは駐車スペース付き宿泊施設、メキシコのはラブホです。国によって「ホテル」の概念が変わるのは面白い事実ではありますが、我々旅行者にとっては面倒この上ないですね。

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